ジージャー・ヤーニン応援ブログ

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太陽の帝国

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ルーカスと並び称される稀代の映画監督に、スピルパーグの名があります。
わたし的には、スピルパーグの最高傑作は「太陽の帝国」という映画なのですが、あまり人気がないのですね(笑)。
でもこの映画、大作です。
解説や原作を超えて映像そのものが語り出す、主人公の視点から広がるこの世界観には、実に多くの見るべきものがあると思います。
この映画をちゃんと観ていないで、タイトルや印象から批判し語ろうとするひとも多いようです。
勝手な解釈でねじ曲げて解説されては、映画の本質は暈されるばかりでしょう。
映画は、それ自体がひとつの物語として、運命の疑似体験をになうものです。
見る側の主観で感想を抱かれるのはしかたのないこと。
ただ、観てもいないのに語られるのはおかしいですね。
語るのなら、まずは映像に刻まれ語られることにこそ真摯に向き合い、その訴えを見つめるべきだとおもうのです。
ゼロ戦に憧れるイギリス人少年が主人公なのですが、彼は日本軍が流す国威発揚のために生み出された嘘の英雄の報道に耳を傾け、中国人の召使にめんどうをみられて暮らします。
日本軍が侵攻して来て、彼をとりまく環境は一変、「戦争」という大きな渦中にその小さな生命は巻き込まれていきます。
簡単に翻り、少年を裏切る中国人の召使。
おどろおどろしい宗教的な側面から描かれる日本兵の不気味さ。
占領下の世界で繰り出される、外国人であるアメリカ人、イギリス人の立ち振る舞いの機微。
「殉じる」という、意志の力が生命を支えているのだという日本兵の心中をあらわす伊武雅刀さんの演技。
主人公の少年、ジェイミーはそれらの価値が渾然と錯綜する世界で、誰かに教えされた価値ではなく、自らのこころから生じた感動に従って、ゼロ戦の出撃に敬礼をするのです。
この大作を、この物語を、こころの問題を省いて語り、それほどに単純なこととして括ってよいものなのだろうかと、わたしは思うのですが。