ルパン三世 Green vs Red 9

「先日、東都デパート新宿店宝石売り場で発生したペアリング盗難事件の真犯人が、防犯カメラの画像解析の結果、グリーンのジャケットを着たルパン三世とみられる男と判明しました。」
ラジオからはルパンの事件を報道する声。
ヤスオの面前には、いかにも持って行ってくださいといわんばかりに、灰皿を吸殻でいっぱいにしたフィアット。
求人誌を放り投げたヤスオは思うのです。
「悪いことさえしなければ上出来」という、最底辺に置かれた施設育ちの孤児の自分が、何を正面から向き合ったところで、上等な世の中の現実というヤツが、マトモに自分を相手にしてくれる理由がない、と。
それが自分の偏見であろうと、やっかみであろうと、ヤスオにとって「楽しくない」ということには変わりはないのです。
現実に自分が打ち勝つ方法。
それはとりもなおさず、自分が手に入れられる「あたらしい人生」の中にしかありません。
でもそれは、ハイリスクを負う生き方です。
でも、胸踊る生き方でもあります。
己の知恵と判断力で手に入れる、自由で崇高な魂。
頼れるのは自分の能力だけ。
けれどもそれは、このうえもないスリルと快感に満ちあふれた世界への誘いです。
そこには、既に魅入られはじめたヤスオがいました。
記号はカタチを結びはじめます。
「ルパン?俺が?」