ジージャー・ヤーニン応援ブログ

いいえ、女優ジージャー・ヤーニンを応援するブログですとも。

創作 チョコレート・ファイター2 その1

イメージ 1

チョコレート・ファイター

暗闇。
真っ暗な部屋のなかでひとり、鼻唄をうたいながらカラダを揺らしている少女(ゼン:ジージャー・ヤーニン)の影。


近づいてくる声。
「ユキちゃん、ユキちゃん!」(ヨーコ:田中麗奈)の声
ドアが開き、薄暗くなった部屋のなかでひとり、上半身をゆらしながら一点をみつめているだけの少女が見えてくる。ゼンだ。
部屋の明かりが点く。
「ユキちゃん、もう、またこんな真っ暗なトコに!」
明かりの下、椅子に座ってただ一点をみつめて揺れている少女に話しかける妊婦(ヨーコ)。
「お買い物にいきましょう、ね」と、ヨーコ。
一点を見つめたままのゼン。
視点の先にあるものは、薄汚れた不出来なぬいぐるみ。
ふと、それを目にとめるヨーコ
一瞬ヨーコの表情が曇る。
しかしすぐに気持ちを切り換えてヨーコはゼンの腕に両腕をからめて、「さあ、今夜は何にしましょうね」と明るくはなしかける。
それには答えず、無造作にヨーコの腹を覗き込み、撫ではじめるゼン。
「あら」と、微笑みをうかべるヨーコ。


横浜、長者町。飲食店街の一角。
宵闇が幕を張りはじめる。
街の喧騒、生活の音の中、飲食店の下働きに勤しむ男の背中(マサシ:阿部寛)があらわれる。
屋外で片づけの作業をただ黙々とこなすその大きな背中。
ゴミをまとめポリバケツを洗いはじめる背中。
それにまとわりつき忙しく何かを話しかけているチンピラがひとり。
無視して手を止めない背中。
「せやかてアニキ」と話し続けるチンピラ(勘次:やべきょうすけ)
「なんぼなんでもアニキがこないなこと」と訴えるその声に、おもむろに振り向き睨めつけるマサシ。
「アニキはやめろと言ってるだろ、勘次」
「せやかて..」(勘次)
怒られることにおびえる様子の勘次をよそに、ふと遠くを追うマサシの目。
肩ごし、背中で語るマサシ。
「悪いな勘次、ユキのめんどう、頼んだぞ」
「あ、アニキ、それはまかしてえな、ユキちゃんはもう、ほんま、オレの天使ですよって」と、やに下がり照れる勘次。
「...夏ももう終わりだな」遠くに目をやったまま、つぶやくようにマサシ。
そのふたりのやり取りを遠くで見ている東洋人がふたり。
マサシの表情を盗むように眺めながらにらんでいる。
背中ごしの遠いその視線に気付くマサシ。
だが、ふりむかない。
ふたたび黙り込んだマサシをいぶかしがり勘次がたずねる。「...アニキ、どないしはりました」


関内。闇の中を爆音をたてて通り過ぎるバイクの群れ。闇を切り裂くようにバイクのメッキ部分が光の尾をひく。
横浜の街の俯瞰。
美しい夜景。
マサシの声のナレーション。



『傷は、どれもすべて、過去から訪れ、いまの自分を語ろうとする。
そしてその傷の原因に思いを巡らせることはいつも、深い心の旅へと彼を誘う。
とりもどせない過去、やり直すことの出来ない彼方へと思いをはせるとき
彼は、傷ついた不完全なものを、愛おしくおもわずにいられなかった。』


タイトル「チョコレート・ファイター2」


夜の屋内施設の中のプール。
飛び込み台の上の少女(レナ:武田梨奈)。
微動だにしない怜悧な表情で、眼下にひろがる大きなプールを見据えている。
巨大なその空間を貸し切りにした様な静寂の中。
飛び込みの水音が響く。ひとりのスーツ姿の紳士(加藤:西 冬彦)がカウチに腰掛けその音を後方にきいている。
その紳士の正面に座っていたマオカラーのスーツにサングラスの男(アキオ)が立ち上がり、拍手。
プールからあがろうとしているレナ。
「レナ、もう時間だ」と声をかける加藤。
プールからあがってきたレナにタオルをかけるアキオ
アキオがレナに言う。「美しさは、強さの中に宿るものです」
タオルで髪をふきながら、ゆっくりとアキオのほうに振り向くレナ。
「なら、強さは何に宿るの」と、レナ。
横目にその会話をききながら、ニヤりと笑っている加藤。