ジージャー・ヤーニン応援ブログ

いいえ、女優ジージャー・ヤーニンを応援するブログですとも。

芽生え

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「ここは住むに便利なところよ、まあちょっとうるさいけど、それもすぐに慣れるからね」

新居にたどり着く親子の姿。
追って来る運命から逃れるように、二人は住居を転々として行った。
ジンは思う。
この子が育って行くために必要な環境だけは与えてあげたい、と。
生きていかなければ。
自分を見舞う運命の魔手がこの子に及ばないように、頼りになるのは自分だけなのだ。
ジンは願う。自分を戒めながら、出来ることはすべてしてあげたい、と。
あいかわらずゼンには言葉がない。
「おうむ返し」と呼ばれる、問うことをそのまま問い返すだけの返事。
言葉のやりとりは成立しない。
母である自分とすら視線を合わせることはない。
でも、それがこの子の障害のカタチなのだ、しょうがない。
力強く黙々と線を描き続け、きらめくものを翳し、透かして覗き込むゼン。
そこには、会話も愛撫もなんの反応もない。
ジンは思う。
それでもいい、と。この子が悲しまないように、いつも自分がいてあげられるのなら、と。