ジージャー・ヤーニン応援ブログ

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さよならの伝説

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ガンダム仮面ライダーのように、生まれてから久しく「原作」から離れてしまっても、素材として優れるので派生して行く作品群があります。
中にはずいぶんマニアックなものもあって、一見ポピュラーに一般受けを狙ってるように見えながら、その実はずいぶん深いところを掘り下げてるモノなんかもあります。
その好例が、OVA版「新・キューティーハニー」でしょう。
キューティーハニーはずいぶんメジャーになりました。
でもこの作品を知ってるヒトは、かなり少ないと思います。
物語は、原作となった少年チャンピオン連載の「キューティーハニー」の最終回から100年後からはじまります。
100年間の間、次ぎにパンサークローが現れる日まで自分の存在を消して待っていたハニーの復活から、(本来は)ハニーが去って行く日までの物語の予定でした。
予定でした、というのは、12話の予定で完結だったものが、製作会社の倒産で8話(厳密には9話)で終了してしまったからです。
物語の核の部分は、つまり「ハニーは歳をとらない」という点にありました。
これはなんとも残酷なことなのです。
第9話で、コスプレシティのライト市長は子供のころ慕っていて「どこにもいかないで」と縋ったハニーのことを回想しますが、それが自分の秘書のハニーと同一人物だったことには気付きませんでした。
何十年も歳をとらないのですから当然でしょう。
4話で姿を消す「邪空間の番人」と名乗るドルメックですが、このキャラクターの顔はそのライト市長に似ています。
この謎は明かされないで物語は終わるのですが、おそらくは、ライト市長が邪空間に堕ち、ハニーを待つことになった後のバラレルな姿なのだという設定なのでしょうね。
物語の中で、早見団兵衛だけがハニーのすべてを見届けることになる(兜十蔵博士によって頭脳以外はすべてメカにしてもらってます)のですが、これもまた本来は切ない設定だと思うのです。
同じ時間の中で、ハニーの哀しい宿命を知るのはハニー本人と団兵衛だけです。
たとえばハニーは、自分が(前作で)救えなかった秋夏子と同じ名前の夏子という少女と出会って胸を痛めたりします。
そしてハニーは、パンサーゾラが時間の彼方に潜行すれば、それを追ってまた100年でも200年でも追い続けていかなければならない存在なのです。
ハニーは言います。
「あなたが蘇るなら、わたしも蘇る!蘇って蘇って、何度でも闘いぬいてやる!」
それがハニーの宿命です。
でも、周りの人たちは生身の人間なので、当然のことながら歳を取り、死んでいってしまう。
人々の記憶の中にはいつまでも若くて美しいハニーが残ったとしても、ハニーからしてみたとき、これはどうなのか、ということです。
どれほど人に愛され、理解されても、ハニーが生きることの使命のすべては結局、未来永劫のパンサークローとの闘いの中だけにあるのですから、人との触れ合いが深くなればなるほど心の痛みは深くなることでしょう。
4話のラストに、ハニーの父である如月博士のメッセージが語られます。
「おまえの身体は人間と変わらない。ピストルの弾をはじき返す超人にすることも出来た。
しかしそれをしなかったのはお前が心を持ったアンドロイドだからだ。
人間の心を持つものには人間の身体が必要だと思ったからだ。
君のからだは私の愛情のすべてをかけて造ったのだ。部品のひとつひとつ、髪の毛の一本一本まですべて。
ハニー、永遠に美しい。ハニー、私の愛の結晶。」
この物語は、ハニーを愛し、生身のからだでハニーを守ろうとする少年、早見直慶とハニーの別れまでを描く(予定だった)ものでした。
それを象徴するのが、OVA後半の挿入歌「さよならの伝説」です。

名前や髪形が変わっても、私を見つけてね
さよならなんかじゃないから、別れは出会いの約束 今度もあなたを好きになる
寄り添い離れてまた逢う 伝説がもしもあるなら
あなたと私はひかれあう ふたつの星だから

平松まゆきさんが歌う、一般的なキューティーハニーのイメージとずいぶん異なる切ないメロディーのエンディング・テーマでした。

なお、文中にさらっと「第9話」とありますが、実はこれは(出来てはいたのですが)本作の製作終了10年後にあらためて収録されたDVD特典の内容のことです。
この物語に想い入れる人々の執念の結晶ですね。
いまみても、作画のクオリティーの高さに、スタッフの意気込みが感じられる作品です。
もし可能なら、この続きをいつか見てみたいものです。