ジージャー・ヤーニン応援ブログ

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創作 チョコレート・ファイター2 その3

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ゼンを日本に連れてきたマサシ。
しかし日本国籍を持たず、しかもタイのシンジケートのひとつを潰したことに関与していることが発覚すれば身の危険も起こりうるのがゼンを取り巻く現実であり、その訪日は誰にも歓迎されるものではなかった。
そして多くの災禍を懸念してゼンの呼び名をかえ籍の届け出もしないまま生活をはじめたマサシだったが、自閉症者との生活の困難さにすぐに挫折してもいた。
誰の手も借りられず、コミュニケーションも満足にとれないという現実は、マサシのすべての動きを塞いで行く。
しかもマサシ自身が元ヤクザ者であり、頼りに出来るのは過去のつて以外に何もなく、もはや仕事も生活もすべてが破綻してしまっていた。
自閉症の障害のある違法入国の外国人を受け入れる隙間は、日本には無い。
追われるように転々とし、マサシとゼンは横浜にたどりつく。
そこでマサシは偶然、自殺しようとしていたひとりの女、ヨーコと出会うこととなる。
助けたのはゼンだった。
絶望に見舞われお腹の子(加藤の子)とともに自らの命を絶とうとしていたヨーコだったが、ゼンに触れていくことで、命や生きることの意味を考え直しはじめるのだった。
ヨーコはゼンに魅入られて行く。
横浜でマサシはかつての舎弟だった勘次と再会した。
勘次はマサシの現状をみかねて、昼間のゼンのお守りを買って出てくれることとなる。
自閉症との出会いは、勘次には衝撃だった。
ゼンの存在に最初は驚いた勘次だが、ゼンを知るごとにその純粋で無垢な魂に感激し、やがて涙を流すほどに心酔していくこととなる。
勘次はゼンを「天使や」と言う。
それはしかし、勘次の中にそういうゼンを受け入れる純粋さがあり、それが化学反応したということの現れでもあったのだが。
誰かに「気の毒な」といわれるだけのはずのゼンが、ヨーコや勘次を変えて行く。
ゼンに触れていく人々は、自分の中にある暖かな何かに気づきはじめて行く。
その様子を見ているマサシは覚悟を決めるのだった。
勘次とヨーコのおかげでマサシはなんとか気質(カタギ)の仕事に就き、慣れない下働きを我慢強く続ける日々をはじめた。
そんなある日、タイのコネクションを譲った昔の舎弟から連絡がはいる。
タイのマフィア組織のナンバーワンが入れ代わり、かつてのシンジケート壊滅事件への追求が厳しくなっているとのこと。
日本人が、少女が、というあまりに手掛かりの曖昧な顛末に、追求の矛先は存在しない日本の対立組織に向けられることとなった。
軋轢のあった日本人のマサシを中心とした未明の組織があり、その中に格闘技の猛者である少女が含まれていたという捏造された情報が一人歩きしはじめることとなる。
口もきけない女の子がひとりで組織のひとつを壊滅させたなどという、あまりにふざけた部下たちのウソを嘲笑する意味を込め、ナンバーワンは、このターゲットのことをコードネーム「CF(チョコレート・ファイター)」と名付けた。
謎の組織と謎の少女を追う彼らの手は日本に伸びる。
彼らはヤクザではなく、大日本翼誠会という政治結社の総裁である加藤へ近づき、彼の私設軍隊でもある「誠心塾」への協力を求めることとなる。
彼らは裏で企業や政治家と繋がり、若年者の予備軍を飼い肥やしながら経済と暴力の中枢を目指す「力の集団」だった。