ジージャー・ヤーニン応援ブログ

いいえ、女優ジージャー・ヤーニンを応援するブログですとも。

天使

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月日は流れた。
マフィアの群れから離れ、誰にも頼ることなく生活を営み始めたジン。
そしていま、おおきなおなかをかかえた彼女の表情には、もうかつての妖艶な陰はなく、ただ、満たされた女の喜びの様子がうかがわれるばかりだった。
母になるということ。
愛するものから授かった命を宿して臨月を迎えた彼女のすべてを、愛情が満たしていた。
時が満ちる。
そしてジンはひとりの女の子を産む。
マサシと別れ、マフィアの仕事から身を引き、生活を飾ることを捨て隠れるように生きている彼女だったが、心は満たされていた。
愛おしい者がそこにいる。
慈しみが自然に沸き上がってくる。
自らが生まれて来たことの意味さえ、そのあたらしい命の息吹は教えてくれる。
心が受けた傷が癒されていく。
その無垢な瞳に、心が洗われてしまう。
こんな日が、自分に訪れるなんて、彼女はかつて思いもしなかったのに。
愛する者とのふたりだけの日々のはじまり。
ふたりだけの密度を持つ時間を過ごすジンの心は、慈しみに満たされていった。
ただ、そこには何故か言葉が生まれなかった。
抱きしめる肌のぬくもりは、たしかに愛を伝えているはずなのに。
言葉を発するのが遅い子はいくらもいる。
ゆっくりとこの子の成長を見守ればいいのだと自分に言い聞かせながらも、焦燥は募りだす。
何かがおかしい。
視線が。
反応が。
無軌道にすぎるのだ。
癇癪を持つ幼い子はいくらもいる。
でも、こんなにたいへんなものなのだろうか。
ジンの不安は深くなりすぎた。

「精密検査をしたところ、お嬢さんはどうも脳の発達に障害があるようです」

医者がおそろしい決断を下した。
わからない。
障害?
脳の障害って何!?
だって、この子はこんなに愛らしいのに!
だって、この子はこんなに...まるで、まるで天使のように無垢なのに!