ジージャー・ヤーニン応援ブログ

いいえ、女優ジージャー・ヤーニンを応援するブログですとも。

カルマ

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『少年は傷ついた不完全なものに、心を惹かれていた。
そしてその傷の原因に思いを巡らせることが好きだった。
その傷に触れるたびに感じる心の旅は、彼にとって大きな喜びであった。
その過程で触れる何か危険な香りは、彼をより深い快感へと誘ったのだ。』

妖艶な美しさに満ちたその女の、無作為に走った瞼の上の深い傷に心奪われながら、命のやり取りの席に身を置くひとりの日本人の男。
異国のタイの地のヤクザのアジト。
人生の底の底で、二人は出会った。
ヤクザとマフィアの縄張り争いの渦中、拳銃を突きつけられて同じテーブルにつく敵同士の二人を、そののちの彼らの現実の業(カルマ)の担い手となって行く者たちが取り囲む。
運命の仕組みの戯画。
すべては、このテーブルから始まるのだった。

怒号が飛び交う中、拳銃に抑え込まれていたその女の髪飾りが弾けて、床に落ちて砕けた。
刹那、女は修羅の形相へと変貌し、蹂躙をふりほどいた。
自分に突きつけられていた拳銃を奪い、ヤクザを組みふせる女。
「動くな」「じっとしてろ!」
声が飛び交う中、ひとりの男の強い声がすべてを遮る。
「やめろ」
マサシだ。
彼女の傷に、彼女の眼差しに魅入られる彼は、マフィアへの手打ちを申し出た。
マフィアのボスは言う。
「二度と俺の前にあらわれるな」と。
立ち去るマフィア一行の中、彼女を眼で追うマサシ。
運命の役者が揃った。
彼は再び、不完全な傷ついたものに心惹かれはじめていた。
それが己の運命(カルマ)だとは知らずに。